血虚(けっきょ)とは?貧血との違い・症状チェック・おすすめの漢方薬を薬剤師が解説 | 灯心堂漢方薬局

この記事の内容

顔色が悪い、爪がもろい、髪が抜ける…「血虚」かもしれません

「血液検査では異常がないのに、なぜかいつも不調」。それは東洋医学でいう「血虚」の可能性があります。
まずはセルフチェックで、あなたの血虚の程度を確認してみましょう。

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血虚(けっきょ)とは ― 血が不足した状態

血虚(けっきょ)とは、東洋医学で「血(けつ)」が不足している状態を指します。

東洋医学の「血」は、西洋医学の「血液」よりも広い概念です。全身に栄養を届け、臓腑や組織を潤し、精神を安定させる働きがあります。この血が不足すると、栄養や潤いが体の隅々まで行き渡らなくなり顔色の悪さ、爪のもろさ、髪の乾燥、目のかすみ、不眠などさまざまな症状が現れます。

血虚は特に女性に多い体質です。月経による定期的な出血、妊娠・出産・授乳による血の消耗など、女性は男性に比べて血を失う機会が多いためです。ただし、男性にも血虚は起こります。過労や栄養不足、慢性的な出血(痔など)が原因で男性が血虚になるケースも少なくありません。

血虚を放置すると、血の巡りも悪くなって瘀血(おけつ)に発展したり、血が不足することで気も消耗して気虚を併発したりすることがあります。

血虚と貧血の違い【比較表】

「血虚って貧血のこと?」とよく聞かれますが、血虚と貧血は似ているようで違うものです。最大の違いは、血液検査で異常が出るかどうかです。

血虚(東洋医学) 貧血(西洋医学)
定義 血の「量」と「質」の不足 ヘモグロビン濃度の低下
血液検査 正常でも血虚はありうる ヘモグロビン値が基準以下
診断方法 舌診・脈診・問診で判断 血液検査で数値的に判断
主な治療 補血の漢方薬+食養生 鉄剤・ビタミンB12など
カバー範囲 不眠・不安・乾燥肌など幅広い 主にめまい・息切れ・動悸

つまり、「血液検査では正常と言われたのに、いつも顔色が悪くて疲れやすい」という方は、東洋医学的には血虚に該当する可能性があります。貧血のある方は鉄剤での治療も必要ですが、血虚の方は漢方薬と食養生で「血の質と量」を根本から改善するアプローチができます。

血虚の症状セルフチェック【10項目】

☐ 顔色が悪い(白っぽい、血色がない)
☐ 爪がもろい、割れやすい、縦スジがある
☐ 髪がパサつく、抜け毛・枝毛が多い
☐ 目が疲れやすい、かすむ、ドライアイ
☐ 肌が乾燥しやすい、カサカサする
☐ 眠りが浅い、夢を多く見る
☐ 生理の量が少ない、周期が長くなった
☐ めまい、立ちくらみがある
☐ 手足がしびれやすい、こむら返りが起きる
☐ 足の指がカサカサする、ひび割れる

チェック結果の目安

  • 1〜3個 → 軽度の血虚。食事の見直しから始めましょう。
  • 4〜6個 → 中等度の血虚。漢方薬での改善をおすすめします。
  • 7個以上 → 血虚がかなり進んでいます。瘀血や気虚など他の体質も影響している可能性がありますので、早めにご相談ください。

舌でわかる血虚のサイン ― 舌診セルフチェック

血虚の方の舌には以下のような特徴が見られます。朝起きたときに鏡で確認するのが最も正確です。

  • 舌の色が淡い(白っぽい):健康な舌は淡紅色(ピンク)ですが、血虚では血色が薄く、淡白な色になります
  • 舌が痩せて小さい:血虚が進むと舌が細く痩せてきます。腎虚のぽってりした舌とは対照的です
  • 舌苔が薄い:全体的に薄い白い苔。苔がほとんどない場合は血虚がかなり進んでいる可能性
  • 舌の表面が乾燥している:潤いが不足しているサイン

血虚が長引いて瘀血に発展すると、舌の色が暗紫色に変わり始めます。「もともと色が白かったのに最近暗くなってきた」という方は、血虚から瘀血に進行している可能性があります。

血虚の原因

月経・出産・授乳(女性に多い原因)

月経による定期的な出血は、血を消耗する最も身近な原因です。特に経血量が多い方は血虚になりやすい傾向があります。妊娠・出産では大量の血が消耗され、授乳もまた血を母乳に変換するため、産後は血虚が最も起こりやすい時期です。

胃腸の弱り(脾虚)

東洋医学では、血は食べたものから作られると考えます。胃腸の働き(脾の機能)が弱いと、食べても血を十分に作れません。食が細い方や胃腸が弱い方は、食べ物の改善だけでなく胃腸の機能自体を立て直す必要があります。

過労・ストレス・睡眠不足

過度な頭脳労働や目の酷使は血を消耗します。東洋医学では「久視は血を傷る」と言い、パソコンやスマートフォンの長時間使用は血虚の一因です。また、睡眠不足は血の回復を妨げます。

偏った食事・ダイエット

極端なダイエットや偏食は、血の原料が不足して血虚を招きます。特に動物性タンパク質や鉄分を避けるベジタリアンの方は血虚になりやすい傾向があります。

慢性的な出血

痔出血、消化管出血、過多月経など、慢性的に少量ずつ出血が続く状態は血虚の原因になります。男性の血虚はこのパターンが多いです。

血虚と足の指・爪・白髪の関係

足の指のカサカサ・ひび割れ

「血虚 足の指」で検索される方が多いですが、これには理由があります。東洋医学では、血は体の末端まで栄養を届ける役割を持っています。血が不足すると、心臓から遠い末端(足の指先、手の指先)への栄養供給が特に減少し、足の指がカサカサになったり、ひび割れたりします。保湿クリームを塗っても改善しにくいのが特徴です。

爪のトラブル

東洋医学では「爪は筋の余り」とされ、肝の血が充実しているかどうかが爪に現れます。血虚の方の爪は、もろくて割れやすい、縦スジが入る、色が白っぽい、二枚爪になるなどの特徴があります。ネイルが映えないとお悩みの方は、血虚が原因かもしれません。

白髪・抜け毛

東洋医学では「髪は血の余り」と言い、髪の質は血の状態を反映します。血虚が進むと髪がパサつき、抜け毛が増え、白髪が早くから目立つようになります。腎虚も白髪の原因になりますが、血虚の場合は髪の乾燥やパサつきがより顕著です。

血虚におすすめの漢方薬【6選】

血虚を改善する漢方薬は「補血剤(ほけつざい)」と呼ばれます。血虚の程度や他の体質との併存によって適切な処方が異なります

「自分にはどの漢方薬が合うのかわからない」という方は

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1. 四物湯(しもつとう)【ツムラ71番】

補血の基本処方です。当帰・芍薬・川芎・地黄の4つの生薬で構成され、血を補い、巡りを良くします。血虚の症状全般に使える万能な処方で、多くの補血剤のベースにもなっています。顔色が悪い、肌が乾燥する、生理量が少ないといった血虚の基本的な症状に。

四物湯の詳細

2. 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)【ツムラ23番】

血虚に加えて冷え性で、むくみがある方に適しています。血を補いながら余分な水分を排出する作用があり、冷え性でむくみやすい女性の血虚にはまずこの処方をおすすめします。妊娠中にも使われる穏やかな処方です。

当帰芍薬散の詳細

3. 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)【ツムラ48番】

血虚と気虚の両方がある方(気血両虚)に用いる処方です。四物湯に四君子湯(補気剤)を加えた構成で、血と気を同時に補います。疲れやすくて顔色も悪い方、大病後や術後の体力回復にも使われます。

十全大補湯の詳細

4. 帰脾湯(きひとう)【ツムラ65番】

血虚による不眠・不安・もの忘れがある方に適した処方です。血を補いながら精神を安定させる作用があります。考えすぎて眠れない、不安が強い、夢を多く見るといった精神症状を伴う血虚に。胃腸が弱い方にも使いやすい処方です。

帰脾湯の詳細

5. 芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)

血虚と瘀血が重なっている方に用いる処方です。血を補いながら、滞った血の巡りも同時に改善します。産後の体調不良はもちろん、生理量が少ないのに生理痛がひどい方(血虚+瘀血の典型)にも適しています。

芎帰調血飲第一加減の詳細

6. 連珠飲(れんじゅいん)

血虚に加えて、めまい・動悸・のぼせがある方に用いる処方です。四物湯と苓桂朮甘湯を合わせた構成で、血を補いながら、めまいやふらつきの原因となる水分代謝の乱れも整えます。更年期のめまいやのぼせを伴う血虚に特に効果的です。市販薬ではルビーナに入っています。

連珠飲の詳細

体質別 漢方薬の選び方

あなたの体質 おすすめの処方 ツムラ番号
血虚の基本(顔色悪い、乾燥、生理量少) 四物湯 71番
血虚+冷え+むくみ 当帰芍薬散 23番
血虚+気虚(疲れやすく顔色も悪い) 十全大補湯 48番
血虚+不眠+不安+もの忘れ 帰脾湯 65番
血虚+瘀血(生理量少ないのに痛い) 芎帰調血飲第一加減
血虚+めまい+動悸+のぼせ 連珠飲

なお、「血虚にサプリメントや鉄剤は効きますか?」というご質問もいただきます。鉄欠乏性貧血が合併している場合は鉄剤も有効ですが、血虚は「血の量」だけでなく「血の質」や「血を作る力」の問題です。鉄のサプリだけでは根本改善にならないケースが多く、漢方薬で胃腸の機能(脾の働き)から立て直すアプローチが効果的です。

血虚を改善する食べ物・薬膳レシピ

血虚の改善には「補血」の作用を持つ食材を積極的に取り入れましょう。赤い食材・黒い食材・動物性の食材がポイントです。

おすすめの食材

分類 食材
赤い食材(補血の基本) なつめ、クコの実、レバー(豚・鶏)、赤身肉、まぐろ、かつお
黒い食材 黒ゴマ、黒豆、黒きくらげ、プルーン、レーズン、ひじき
緑の葉野菜 ほうれん草、小松菜、春菊(鉄分も豊富)
その他 卵、牡蠣、龍眼肉、当帰(生薬)、阿膠(あきょう)

簡単薬膳レシピ:なつめとクコの実のスープ

材料(2人分)

鶏手羽元 4本 / なつめ 6個 / クコの実 大さじ1 / 生姜薄切り 3枚 / 水 600ml / 塩 少々

作り方

鍋に水・手羽元・なつめ・生姜を入れて火にかけ、沸騰したらアクを取り、弱火で30分煮込みます。仕上げにクコの実を加え、塩で味を整えるだけ。なつめは補血の代表的な薬膳食材で、鶏肉の良質なタンパク質と合わせることで血を作る力を高めます。

避けた方がよい食べ物

  • 生野菜・冷たいサラダの大量摂取:体を冷やし、胃腸の血を作る力を弱めます。温野菜やスープにして摂りましょう
  • 極端なダイエット・糖質制限:血の原料が不足し、血虚が悪化します
  • インスタント食品・加工食品の偏り:栄養が偏り、質の良い血が作れません

血虚の改善におすすめのお茶・飲み物

なつめ茶 補血の代表的なお茶。なつめを割ってお湯で煮出すだけ。自然な甘みがあり飲みやすく、毎日続けやすい。胃腸にも優しい。
クコの実茶 お湯にクコの実を入れて数分待つだけ。血を補いながら目の疲れにも効果があり、パソコン作業が多い方に最適。飲んだ後の実も食べましょう。
龍眼肉茶(りゅうがんにくちゃ) 龍眼肉は補血と安神(精神を安定させる)の両方の作用を持つ生薬。不眠を伴う血虚の方に特におすすめ。ライチに似た甘みがあります。
黒豆茶 黒い食材で血と腎を同時に補います。ノンカフェインで安心。血虚と腎虚が重なっている方に。
アンゼリカ茶 アンゼリカはハーブの一種でセイヨウトウキといいます。独特の甘い香りがあります。

血虚にコーヒーは良い?悪い?

「血虚にコーヒーは良くないですか?」というご質問も多くいただきます。

結論から言うと、血虚の方はコーヒーを控えめにした方が良いです。理由は3つあります。

  • 利尿作用で血の原料となる水分を排出してしまい、血を作る力を弱めます
  • カフェインが鉄分の吸収を妨げるため、食事と一緒にコーヒーを飲むと、せっかくの補血食材の効果が減ってしまいます
  • 交感神経を刺激して血を消耗しやすくなります。特に不眠を伴う血虚の方は夕方以降のカフェインを避けましょう

1日1杯程度であれば問題ありませんが、食事の前後1時間は避け、午前中に温かい状態で飲むのがベターです。コーヒーの代わりに、上で紹介したなつめ茶やクコの実茶を試してみてください。

血虚に効くツボ【4選】

1. 血海(けっかい)

場所:膝のお皿の内側上端から、指3本分上。太ももの内側。
効果:名前の通り「血の海」を意味するツボ。血を補い、巡りを改善する補血の代表的なツボです。生理不順、生理痛にも効果あり。
押し方:親指で3〜5秒ゆっくり押して離す、を10回。お灸も効果的です。

2. 三陰交(さんいんこう)

場所:内くるぶしの頂点から、指4本分上。すねの骨の後ろ側。
効果:肝・脾・腎の3つの経絡が交わるツボで、血を作り、巡らせ、貯える機能すべてに働きかけます。婦人科系全般に効く万能ツボ。
押し方:やや強めに5秒押して離す、を10回。入浴中に押すとさらに効果的。

3. 足三里(あしさんり)

場所:膝のお皿の下端から、指4本分下。すねの骨の外側。
効果:胃腸の機能を高め、「血を作る力」を強化するツボ。血虚の根本原因である脾胃の弱りを改善します。食欲不振や胃腸の弱い方に特におすすめ。
押し方:親指で5秒押して離す、を10回。毎日続けることが大切です。

4. 膈兪(かくゆ)

場所:背中の第7胸椎の棘突起の左右、指2本分外側。
効果:「血会(けつえ)」と呼ばれ、血に関わるすべての症状に効くとされる重要なツボ。血を補い、巡りを改善する。
押し方:背中のツボなので、テニスボールを背中と床の間に挟んで仰向けになる方法が手軽。お灸もおすすめ。

血虚の方は血海と三陰交のセットを毎日5分、入浴後に押す習慣をつけるのが最も手軽な改善法です。

血虚と他の体質が重なっている場合

血虚 + 気虚(ききょ)の場合 ― 最も多い組み合わせ

血が足りないと気も不足しやすく(気血両虚)、逆もまた然りです。疲れやすくて顔色も悪い、食欲がなくて生理量も少ないという方はこのタイプ。

おすすめの処方十全大補湯(気血両方を補う)

血虚 + 瘀血(おけつ)の場合

血が足りないのに巡りも悪い状態。顔色が悪いのにシミができる、生理量が少ないのに生理痛はひどい、という矛盾した症状が特徴です。

おすすめの処方芎帰調血飲第一加減(補血と駆瘀血を同時に)

血虚 + 気滞(きたい)の場合

血が足りない上に気も滞っている状態。イライラしやすいのに顔色が悪い、PMSの症状が強い方に多い。

おすすめの処方加味逍遙散(気滞と血虚の両方に対応)

血虚 + 水滞(すいたい)の場合

血が足りないのにむくみがある状態。顔色が白くてむくみやすい、めまいやふらつきもある方。

おすすめの処方当帰芍薬散(補血と利水の両方に対応)、連珠飲(めまいを伴う場合)

血虚 + 腎虚(じんきょ)の場合

血と腎精の両方が不足している状態。加齢に伴い、白髪・脱毛・耳鳴り・足腰のだるさと、顔色の悪さ・乾燥肌が同時に現れる方。

おすすめの処方:四物湯に補腎剤を加える処方をご提案します。LINEからご相談ください。

血虚と関連する症状

血虚はさまざまな症状の根底にある体質的な要因です。以下のお悩みをお持ちの方は、血虚が関わっている可能性があります。

各記事では、それぞれの症状に合った漢方薬を詳しく紹介しています。

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この記事を監修した薬剤師

灯心堂漢方薬局 薬剤師 西山光
調剤薬局での薬局長を経て、漢方専門薬局を開局。西洋医学と東洋医学の両面から、一人ひとりの体質に合った漢方薬をご提案しています。煎じ薬を中心に200種以上の処方に対応。