コレクション: 更年期におすすめの漢方薬9選|それぞれの特徴と違いを徹底比較

この記事では、更年期に使われる代表的な9つの漢方薬について、それぞれの特徴・違い・使い分けを漢方薬剤師の視点から解説します。読み終えるころには、ご自身の症状に合う1剤が見えてくるはずです。

 

この記事の内容

  • 更年期の原因と漢方の考え方
  • 更年期の漢方薬9つの選択肢
  • あなたに合う漢方薬のセルフ診断
  • 9つの漢方薬の特徴と違い
  • 多角的な比較表(症状/体質)
  • よく似た漢方薬の使い分け(ペア比較)
  • 失敗しない選び方の3ステップ
  • 更年期におすすめの食べ物・生活習慣・ツボ

更年期の原因と漢方の考え方

更年期障害の主な原因は、閉経前後(一般的に45〜55歳頃)のエストロゲンの急激な減少です。女性ホルモンが低下することでホルモンバランスが乱れ、自律神経の働きにも影響し、さまざまな不調が現れます。症状の現れ方には個人差があり、軽い方もいれば日常生活に支障が出るほどつらい方もいます。

更年期の主な症状

  • 精神症状:イライラ、怒りっぽさ、気分の落ち込み、不安、やる気が出ない、眠れない
  • 血管運動症状:ホットフラッシュ(のぼせ・ほてり)、寝汗、動悸
  • 身体症状:めまい、頭痛、肩こり、関節痛、腰痛、疲労感、だるさ
  • 婦人科症状:生理不順、不正出血、腟の乾燥

漢方では「気滞」と「気血腎の虚」で考える

漢方では、更年期の症状の多くは「気滞(気の滞り)」と「気虚・血虚・腎虚(気・血・腎の不足)」が同時に存在すると考えます。

  • 気滞(きたい):気の巡りの滞り。イライラ、胸の張り、気分のふさぎに関連。
  • 気虚(ききょ):気の不足。疲労感、やる気が出ない、汗をかきやすい。
  • 血虚(けっきょ):血の不足。気分の落ち込み、不眠、めまい、髪や肌の乾燥。
  • 腎虚(じんきょ):腎の衰え。ホットフラッシュ、冷え、頻尿、腰痛、関節痛

さらに腎虚には2種類あります。腎陰虚は「体を冷やす力の不足」でホットフラッシュ・ほてり・寝汗を、腎陽虚は「体を温める力の不足」で冷え・頻尿・むくみを引き起こします。どの要素が強いかによって、選ぶ漢方薬が変わります。

更年期の漢方薬|まず知っておきたい9つの選択肢

更年期に使われる漢方薬は数多くありますが、当店で特によくご提案するのは以下の9種類です。それぞれの一言特徴を先に押さえておきましょう。

  • 芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん):更年期全般・イライラ+疲れやすさに(更年期の代表処方)
  • 加味逍遙散(かみしょうようさん):イライラ・不安・ほてりが混在するときに
  • 抑肝散(よくかんさん):ちょっとしたことで怒ってしまうときに
  • 知柏地黄丸(ちばくじおうがん):ホットフラッシュ・ほてりが強いときに(腎陰虚)
  • 八味地黄丸(はちみじおうがん):冷え性・頻尿があるときに(腎陽虚)
  • 連珠飲(れんじゅいん):動悸・めまいがあるときに
  • 十全大補湯(じゅうぜんだいほとう):疲労倦怠感・やる気が出ないときに
  • 帰脾湯(きひとう):気分の落ち込みが強いときに
  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):冷えのぼせ・肩こり・下腹部痛があるときに

どれも更年期に効果が期待できる漢方薬ですが、効くポイントが違うため、誤った選び方をすると効果を感じにくいことがあります。次の章で、ご自身に合うタイプをセルフ診断してみましょう。

あなたに合う漢方薬は?9つのタイプ別セルフ診断

更年期の漢方薬は「一番つらい症状」で選ぶのがわかりやすいです。以下の質問に答えていくと、ご自身に合う漢方薬がわかります。

STEP1:更年期でもっとも気になる症状はどれですか?

  • 症状は多彩、イライラ+疲れやすさが目立つ(全般型)  「芎帰調血飲第一加減タイプ」
  • 精神症状(イライラ・怒り・落ち込み)が強い → STEP2へ
  • ホットフラッシュ・冷えの症状が強い STEP3へ
  • 動悸・めまいがある → 「連珠飲タイプ」
  • 疲労倦怠感・やる気が出ない → 「十全大補湯タイプ」
  • 冷えのぼせ・肩こり・下腹部痛 → 「桂枝茯苓丸タイプ」

STEP2:精神症状が強い方は、どんなタイプですか?

  • イライラ+不安+ほてりが混在 → 「加味逍遙散タイプ」
  • 怒りが強い・カッとなる → 「抑肝散タイプ」
  • 気分の落ち込みが強い → 「帰脾湯タイプ」

STEP3:ホットフラッシュ・冷えの方は、どちらが強いですか?

  • ホットフラッシュ・ほてり・寝汗が強い(腎陰虚)→ 「知柏地黄丸タイプ」
  • 冷え・頻尿がある(腎陽虚)→ 「八味地黄丸タイプ」

診断結果の見方

  • 芎帰調血飲第一加減タイプ:更年期全般
  • 加味逍遙散タイプ:イライラ+ほてり
  • 抑肝散タイプ:怒り
  • 知柏地黄丸タイプ:ホットフラッシュ強い
  • 八味地黄丸タイプ:冷え・頻尿
  • 連珠飲タイプ:動悸・めまい
  • 十全大補湯タイプ:疲労倦怠感
  • 帰脾湯タイプ:気分の落ち込み
  • 桂枝茯苓丸タイプ:冷えのぼせ・肩こり

セルフ診断はあくまで目安です。更年期は複数の症状が同時に出ることが多いため、複数のタイプにまたがる場合や判断に迷う場合は、漢方薬局でのご相談をおすすめします。

更年期の漢方薬9選|それぞれの特徴と違いを徹底比較

ここからは、9つの漢方薬の特徴を「効くタイプ」「配合生薬」「他の漢方薬との違い」の3点から詳しく解説していきます。

①芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)

こんな方におすすめ

  • 更年期の症状が多彩に出ている
  • イライラと疲れやすさが同時にある
  • 気分の不安定を感じる
  • ホルモンバランスを整えたい
  • 更年期の代表的な処方を試したい

配合生薬と働き

当帰・川芎・地黄・芍薬などの血を補う生薬に、気を巡らせる生薬を加えた複合的な処方です。更年期に見られる「気滞・瘀血・血虚・気虚、少し腎虚傾向」に幅広く対応します。気血を補いつつ、滞った気を巡らせてイライラを和らげ、ホルモンバランスを整えます。

他の漢方薬との違い

芎帰調血飲第一加減の最大の特徴は「更年期全般に幅広く対応する」オールラウンダーである点です。「更年期障害といえばこの処方」と言えるほど、更年期に頻用されます。単一症状に特化した処方(知柏地黄丸=ホットフラッシュ、八味地黄丸=冷えなど)と違い、症状が多彩で「あちこち不調」というときの第一選択になります。授乳中も服用できるのも特徴です。

②加味逍遙散(かみしょうようさん)

こんな方におすすめ

  • イライラと不安が混在している
  • のぼせ・ほてりがある
  • 気分の浮き沈みが激しい
  • 疲れやすく、肩こり・頭痛もある
  • 胸や脇が張る

配合生薬と働き

柴胡(さいこ)・薄荷(はっか)・当帰(とうき)・芍薬(しゃくやく)・白朮・茯苓・甘草・生姜・牡丹皮(ぼたんぴ)・山梔子(さんしし)で構成されています。逍遙散に、熱を冷ます牡丹皮と山梔子を加えた処方です。気滞・血虚に加えて、のぼせ・イライラといった熱症状にも対応します。

他の漢方薬との違い

加味逍遙散の最大の特徴は「気を巡らせ、血を補い、熱を冷ます」の3つを同時に行える点です。更年期のイライラ・不安・ほてりが混在するタイプに向きます。同じ更年期でも、怒りが強すぎるなら抑肝散、ホットフラッシュが最もつらいなら知柏地黄丸と使い分けます。「PMS」でも代表的な処方で、女性の心と体の不調に幅広く使われます。

③抑肝散(よくかんさん)

こんな方におすすめ

  • 更年期にちょっとしたことでカッとなる
  • 怒りっぽくなり、家族に当たってしまう
  • 感情のコントロールが難しい
  • 歯ぎしり・筋肉のこわばりがある
  • 神経が高ぶって落ち着かない

配合生薬と働き

釣藤鈎(ちょうとうこう)・柴胡(さいこ)・当帰・川芎・白朮・茯苓・甘草で構成されています。釣藤鈎・柴胡が気を巡らせて怒りを鎮め、当帰・川芎が血を補って神経の高ぶりを和らげます。「肝の高ぶり」を抑える処方です。

他の漢方薬との違い

抑肝散の最大の特徴は「怒り」に特化している点です。加味逍遙散が「イライラ+不安+ほてり」など幅広い症状に対応するのに対し、抑肝散は「怒り・カッとなる」感情に直接アプローチします。更年期で家族や周囲に当たってしまうことに悩まれる方に向きます。「イライラ」と「怒り」の違いで使い分けるのがポイントです。

④知柏地黄丸(ちばくじおうがん)

こんな方におすすめ

  • ホットフラッシュがつらい
  • ほてり・寝汗がある
  • のぼせて顔が赤くなる
  • 口や喉が渇きやすい
  • 足腰がだるい・腰痛がある

配合生薬と働き

地黄(じおう)・山茱萸(さんしゅゆ)・山薬(さんやく)・茯苓・沢瀉・牡丹皮という腎を補う六味地黄丸の生薬に、知母(ちも)と黄柏(おうばく)という熱を冷ます生薬を加えた処方です。腎陰(体を冷やす潤い)を補いながら、こもった熱を冷ますことで、ホットフラッシュ・ほてりを和らげます。

他の漢方薬との違い

知柏地黄丸の最大の特徴は「腎陰虚(体の潤い不足による熱)によるホットフラッシュ」に対応する点です。ほてりを冷ますだけの処方(黄連解毒湯など)と違い、腎を補いながら熱を冷ますため、更年期の根本的なアンチエイジングとホットフラッシュの改善を同時に目指せます。八味地黄丸とは正反対(熱を冷ますvs温める)の使い分けになります。

⑤八味地黄丸(はちみじおうがん)

こんな方におすすめ

  • 更年期に冷え性がひどい
  • 頻尿・夜間頻尿がある
  • 腰や足腰がだるい・弱い
  • 下半身が特に冷える
  • 倦怠感・気力の低下

配合生薬と働き

地黄(じおう)・山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮・桂皮(けいひ)・附子(ぶし)の8つの生薬で構成されています。六味地黄丸に、桂皮・附子という温める生薬を加えた処方です。腎陽(体を温める力)を補うことで、冷え・頻尿・腰のだるさを改善します。

他の漢方薬との違い

八味地黄丸の最大の特徴は「腎陽虚(温める力の不足)」に対応する点です。知柏地黄丸が「熱を冷ます」のと正反対のアプローチで、冷えと頻尿が中心の更年期症状に向きます。同じ更年期でも、体質(ほてる/冷える)を見極めて使い分けます。腎を補うアンチエイジング処方でもあり、下半身の衰えを感じる方に適しています。

⑥連珠飲(れんじゅいん)

こんな方におすすめ

  • 更年期に動悸がする
  • めまい・立ちくらみがある
  • のぼせを伴う
  • むくみがある
  • 気持ちが落ち着かない

配合生薬と働き

連珠飲は、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)と四物湯(しもつとう)を合わせた処方です。白朮・茯苓・桂皮・甘草が余分な水分を巡らせて動悸・めまいを鎮め、当帰・芍薬・川芎・地黄が血を補ってホルモンバランスを整えます。

他の漢方薬との違い

連珠飲の最大の特徴は「動悸・めまい」に特化している点と、「水の停滞と血の不足」の両方に対応する点です。更年期の動悸・めまいの背景には、水分代謝の乱れとホルモン変化による血の不足があることが多く、連珠飲はその両方に働きかけます。動悸で不安を感じる更年期の方の頼れる処方です。

⑦十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)

こんな方におすすめ

  • 更年期の疲労倦怠感が強い
  • やる気が出ない・気力低下
  • 顔色が悪い・貧血気味
  • 体力が明らかに落ちている
  • 病後・術後・産後の回復期

配合生薬と働き

四君子湯(人参・白朮・茯苓・甘草)と四物湯(当帰・芍薬・川芎・地黄)を合わせ、さらに黄耆(おうぎ)と桂皮(けいひ)を加えた10種類の生薬で構成されています。人参・黄耆が気を補い、当帰・芍薬・川芎・地黄が血を養うことで、「気血両虚」を強力に改善します。

他の漢方薬との違い

十全大補湯の最大の特徴は「気血両方をしっかり補う」点で、補う力の強さが特徴です。他の処方が「巡らせる」「熱を冷ます」「動悸を鎮める」などのアプローチなのに対し、十全大補湯はひたすら「補う」処方です。更年期でエネルギーが枯渇したように感じる方、やる気が出ないという方に向きます。ガス欠状態の心と体を回復させる処方です。

⑧帰脾湯(きひとう)

こんな方におすすめ

  • 更年期に気分の落ち込みが強い
  • くよくよ考えてしまう
  • 不安で眠れない
  • 疲労感が強い
  • 貧血気味・顔色が悪い

配合生薬と働き

人参・黄耆・白朮・茯苓・酸棗仁(さんそうにん)・竜眼肉(りゅうがんにく)・遠志(おんじ)・当帰などで構成されています。酸棗仁・竜眼肉が「心の血」を養い、人参・黄耆が「気」を補うことで、精神を安定させます。心と体の消耗を補う処方です。

他の漢方薬との違い

帰脾湯の最大の特徴は「心の血を養って気分の落ち込みを改善する」点です。抑肝散が「怒り」、加味逍遙散が「イライラ+ほてり」なのに対し、帰脾湯は「落ち込み・くよくよ」に対応します。同じ精神症状でも、感情のベクトルが下向きなら帰脾湯、上向きなら抑肝散・加味逍遙散を選びます。心の血が不足しているPMDDや軽度のうつ的な症状にも用いられます。

⑨桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

こんな方におすすめ

  • のぼせと足の冷え(冷えのぼせ)が同時にある
  • 肩こり・頭痛が強い
  • 下腹部痛・生理痛がある
  • 顔がのぼせて赤くなりやすい
  • 比較的体力がある

配合生薬と働き

桂皮(けいひ)・茯苓(ぶくりょう)・牡丹皮(ぼたんぴ)・桃仁(とうにん)・芍薬(しゃくやく)の5つの生薬で構成されています。桂皮・桃仁・牡丹皮が滞った血(瘀血)を巡らせ、のぼせ・肩こり・下腹部痛を改善します。「瘀血を取り除く」代表処方です。

他の漢方薬との違い

桂枝茯苓丸の最大の特徴は「瘀血(血の滞り)」に特化している点です。上半身がのぼせるのに下半身は冷える「冷えのぼせ」は、瘀血の典型的なサインで、桂枝茯苓丸が最適です。同じホットフラッシュでも、腎陰虚が原因なら知柏地黄丸、瘀血が原因なら桂枝茯苓丸と使い分けます。体力のある方向けで、肩こりや頭痛を伴う更年期の方に向きます。

9つの漢方薬を多角的に比較

9つの漢方薬の違いを、複数の視点から一覧で比較してみましょう。

【比較表①】メイン症状別の適応

漢方薬 主な適応症状
芎帰調血飲第一加減 更年期全般(イライラ・疲労・不安定な症状)
加味逍遙散 イライラ+不安+ほてり(複合的な精神症状)
抑肝散 怒り・カッとなる(精神症状に特化)
知柏地黄丸 ホットフラッシュ・寝汗(腎陰虚)
八味地黄丸 冷え・頻尿・腰のだるさ(腎陽虚)
連珠飲 動悸・めまい(水滞+血虚)
十全大補湯 疲労倦怠感・やる気が出ない(気血両虚)
帰脾湯 気分の落ち込み・不眠(血虚)
桂枝茯苓丸 冷えのぼせ・肩こり・下腹部痛(瘀血)

 

【比較表②】漢方的なタイプと体力の目安

漢方薬 漢方的なタイプ 体力の目安
芎帰調血飲第一加減 気血両虚+気滞+瘀血 中くらい〜やや虚弱
加味逍遙散 気滞+血虚+熱 中くらい〜やや虚弱
抑肝散 肝の高ぶり 中くらい
知柏地黄丸 腎陰虚(潤い不足) 中くらい
八味地黄丸 腎陽虚(温める力不足) 中くらい〜低下
連珠飲 水滞+血虚 やや虚弱
十全大補湯 気血両虚 虚弱・体力低下
帰脾湯 気血両虚(心の血の不足) やや虚弱
桂枝茯苓丸 瘀血 中くらい〜体力あり

 

【比較表③】使い方と特徴

漢方薬 使い方の目安 特徴
芎帰調血飲第一加減 1〜3か月継続 更年期の代表処方、幅広く使える
加味逍遙散 1〜3か月継続 精神症状の代表処方
抑肝散 数週間〜数か月 怒りが強い時期に
知柏地黄丸 3か月以上 アンチエイジング+ホットフラッシュ
八味地黄丸 3か月以上 アンチエイジング+温める
連珠飲 数週間〜数か月 動悸・めまいに継続的に
十全大補湯 1〜3か月継続 体力回復に、じっくり補う
帰脾湯 1〜3か月継続 気分の落ち込み・不眠に
桂枝茯苓丸 3か月以上 瘀血体質の改善に

よく似た漢方薬の使い分け|ペア比較で違いを深掘り

「2つの漢方薬で迷う」というご相談も多くいただきます。よく比較されるペアを取り上げ、それぞれの違いと選び方を解説します。

知柏地黄丸 vs 八味地黄丸|腎虚タイプの使い分け

どちらも「六味地黄丸」をベースにした腎を補う処方ですが、加える生薬が正反対です。

  • ホットフラッシュ・ほてり・寝汗(腎陰虚)→ 知柏地黄丸(熱を冷ます)
  • 冷え・頻尿・下半身の衰え(腎陽虚)→ 八味地黄丸(温める)

知柏地黄丸は「潤いを補って熱を冷ます」、八味地黄丸は「温めて補う」という真逆のアプローチです。同じ更年期でも、ほてる方と冷える方で使う処方がまったく異なります。両方の症状が混在する方には、時期や体調に合わせて使い分けたり、専門家に相談して調整することもあります。

加味逍遙散 vs 芎帰調血飲第一加減|更年期の万能型の使い分け

どちらも更年期に幅広く使える処方ですが、体質と症状の重心が異なります。

  • イライラ・不安・ほてりが強い(精神症状+熱) 加味逍遙散
  • 症状が多彩で疲労感も強い(気血消耗+気滞) 芎帰調血飲第一加減

加味逍遙散は「熱を冷ます力」があり、ほてり・イライラが目立つ方に向きます。芎帰調血飲第一加減は「補いながら巡らせる」バランス型で、疲労感が強く症状が多彩な方に向きます。両方とも更年期の代表処方で、体質と主症状で使い分けます。

抑肝散 vs 加味逍遙散|精神症状の使い分け

どちらも更年期の精神症状に使えますが、感情の出方で選びます。

  • 怒りが強い・カッとなる 抑肝散
  • イライラ+不安+ほてりが混在 → 加味逍遙散

抑肝散は「怒り」に特化、加味逍遙散は「幅広い精神症状+ほてり」に対応します。「カッとなって家族に当たる」ことが最大の悩みなら抑肝散、「気分の浮き沈み+ほてりや肩こりも」あるなら加味逍遙散を選びます。両方を組み合わせることもあります。

十全大補湯 vs 帰脾湯|補うタイプの使い分け

どちらも気血両虚に対応する補う処方ですが、症状の中心が異なります。

  • 体力低下・疲労倦怠感・やる気が出ない 十全大補湯(体を補う)
  • 気分の落ち込み・不眠・不安 帰脾湯(心の血を補う)

十全大補湯は「体のガス欠」を回復させる処方、帰脾湯は「心の疲弊」を癒す処方です。体の疲労が中心なら十全大補湯、精神的な落ち込みが中心なら帰脾湯を選びます。両方が重なる場合は組み合わせることもあります。

知柏地黄丸 vs 桂枝茯苓丸|ホットフラッシュの使い分け

どちらもほてり・のぼせに使えますが、原因が異なります。

  • 腎の潤い不足によるほてり・寝汗(腎陰虚)→ 知柏地黄丸
  • 血の滞りによる冷えのぼせ・肩こり(瘀血)→ 桂枝茯苓丸

知柏地黄丸は「補いながら冷ます」、桂枝茯苓丸は「巡らせて瘀血を取る」処方です。同じホットフラッシュでも、腎の衰え(疲労感や腰痛を伴う)が背景にあるなら知柏地黄丸、瘀血(肩こりや下腹部痛を伴う)が背景にあるなら桂枝茯苓丸を選びます。体力の目安は、桂枝茯苓丸のほうがしっかりしている方向けです。

更年期の漢方薬の選び方|失敗しない3ステップ

ここまでの内容を踏まえて、ご自身に合う漢方薬を選ぶための実践的な3ステップをご紹介します。

STEP1:一番つらい症状を1つ絞る

更年期は症状が多彩ですが、まず「一番つらい症状」を1つ絞り込みます。

  • 症状が多彩・全般的につらい → 芎帰調血飲第一加減
  • イライラ・怒り・落ち込みなど精神症状 → 加味逍遙散・抑肝散・帰脾湯
  • ホットフラッシュ・冷え → 知柏地黄丸・八味地黄丸
  • 動悸・めまい → 連珠飲
  • 疲労・やる気が出ない → 十全大補湯
  • 冷えのぼせ・肩こり → 桂枝茯苓丸

STEP2:体質(熱・冷え・体力)を確認する

次に、体質で絞り込みます。

  • ほてり・熱がこもるタイプ → 加味逍遙散・知柏地黄丸
  • 冷えが強いタイプ → 八味地黄丸
  • 体力が低下している → 十全大補湯・帰脾湯・連珠飲
  • 体力が保たれている → 抑肝散・桂枝茯苓丸

STEP3:長期的な体質改善か、目先の症状かで判断する

最後に、目的で判断します。

  • 長期的に更年期の体質改善(3か月以上)→ 芎帰調血飲第一加減・知柏地黄丸・八味地黄丸・桂枝茯苓丸
  • 目立つ症状を集中的にケア → 加味逍遙散・抑肝散・連珠飲・十全大補湯・帰脾湯

選び方のコツ

更年期は症状が多彩なため、複数の処方を組み合わせることも珍しくありません。ベースの処方(芎帰調血飲第一加減や加味逍遙散など)に、目立つ症状に応じた処方(知柏地黄丸=ホットフラッシュ、連珠飲=動悸など)を組み合わせるのも有効です。体調の変化に合わせて処方を調整していくのが更年期漢方のコツです。

  • 迷ったときは漢方薬剤師に相談
  • 季節・体調で症状が変わったら処方も見直す
  • 症状がひどい・うつ症状が強い場合は医療機関へ

更年期におすすめの食べ物・生活習慣・ツボ

漢方薬とあわせて、日々の食事・生活・セルフケアを整えることで、更年期を穏やかに過ごしやすい体質づくりをサポートできます。

おすすめの食べ物

更年期の多くは「気滞」の症状と「気虚・血虚・腎虚」の虚の体質が同時にみられます。両方に働きかける食材を意識しましょう。

気の巡りを良くする・香りの良い食べ物(気滞向け・イライラや胸の張りに)

  • 紫蘇(しそ)
  • 薄荷(ハッカ)
  • 春菊
  • セロリ
  • ジャスミンティー

気血・腎を補う食べ物(気虚・血虚・腎虚向け・疲労や虚弱に)

  • 白米
  • 黒胡麻
  • 山芋・長芋
  • 骨のついた肉、魚

優しい甘味のものや色の濃い野菜、腎を補うとされる黒い食材(黒胡麻・黒豆・黒きくらげ)などを取り入れると良いでしょう。

おすすめの生活習慣|気を巡らせつつ、体に無理させない

更年期の症状の多くは、気滞の溜まっている症状と腎虚・気虚・血虚の虚弱体質が同時に存在します。ポイントは「気を巡らせると同時に、体に無理させない」ことです。

  • ウォーキングで気を巡らせつつ、適度に体をつかう
  • 激しい運動よりも、続けられる穏やかな運動を
  • 血を消耗しないよう、スマホの使い過ぎに注意
  • 睡眠をしっかりとって気血を補う
  • お腹・腰を冷やさない

おすすめのツボ|後渓(こうけい)

後渓は手を軽く握ったときにできる、小指側の横シワの端にあるツボです。太陽小腸経(たいようしょうちょうけい)の経穴で、経絡の通りを良くし、痛みを抑え、体内の熱を冷ます働きがあります。精神不安にも良いとされ、更年期の不調全般に役立つツボです。仕事や家事の合間に、気になったときにゆっくり押してみましょう。

漢方薬を選ぶときによくある質問

Q. 更年期はいつから、いつまで続きますか?

一般的に、閉経の前後5年間(合わせて約10年間)を更年期と呼びます。日本人女性の閉経の平均は50歳前後なので、45〜55歳頃が更年期にあたります。個人差が大きく、40代前半から症状が出始める方(プレ更年期)もいれば、閉経後も症状が続く方もいます。

Q. ホルモン補充療法(HRT)と漢方薬は併用できますか?

基本的に併用可能です。HRTでホルモンを補いつつ、漢方薬で体質を整える方もいらっしゃいます。「HRTだけでは取れない症状がある」「HRTを減らしたい」という方の選択肢にもなります。必ず処方医と漢方薬局の両方に併用していることをお伝えください。

Q. 命の母・エクエル・サプリと漢方薬の違いは何ですか?

命の母Aは複数の生薬とビタミン類を配合した女性向けの一般用医薬品、エクエルは大豆イソフラボン由来のエクオールを補うサプリメントです。手軽に始めやすい反面、個人の症状や体質に特化した処方ではありません。漢方薬は「あなたの更年期のタイプ」に合わせて処方を選び、生薬の量や種類を調整できるため、より的確なアプローチが可能です。サプリで改善しない方や、症状が特定できている方は漢方薬をおすすめします。

Q. 男性更年期にも漢方薬は使えますか?

男性更年期(LOH症候群)にも漢方薬は応用できます。男性の場合、テストステロンの低下による疲労感・気力低下・性機能低下・不眠などが主症状です。腎を補う八味地黄丸や、気血を補う十全大補湯、精神症状には加味逍遙散(男性にも使えます)などが用いられます。男性更年期は診断が難しい面もあるため、まず泌尿器科や男性更年期外来での相談もおすすめします。

Q. 複数の漢方薬を併用してもいいですか?

更年期の漢方薬同士の併用は、薬剤師の判断のもとで行うことがあります。たとえばベースに芎帰調血飲第一加減、ホットフラッシュがひどい時期に知柏地黄丸を追加、といった使い方もあります。自己判断での併用は避け、専門家にご相談ください。

Q. ツムラと当店の漢方薬は何が違いますか?

市販されているツムラなどの製剤は、配合量が抑えめに作られていることが多いです。当店では、芎帰調血飲第一加減・知柏地黄丸・連珠飲のようにツムラ製剤として広く流通していない処方も、当店では取り扱いがあります。

Q. 漢方薬はどのくらいで効きますか?

更年期の漢方薬は、体質改善型が多く、1〜3か月かけてじっくり整えていくのが基本です。動悸・イライラなどの急性症状は数週間で変化を感じることもあります。腎虚に対する知柏地黄丸・八味地黄丸などのアンチエイジング処方は、3か月以上の継続を目安に効果を評価します。

Q. 効果を感じない場合はどうすればいいですか?

1〜2か月試して変化を感じない場合は、タイプが合っていない可能性があります。症状や体質を見直して別の処方に切り替えるか、薬剤師に相談して調整しましょう。更年期は症状が変動するため、季節や時期によって処方を見直すのも大切です。うつ症状が強い、日常生活に支障が出る場合は、婦人科・心療内科の受診も検討してください。

自分に合う漢方薬がわからない方へ

ここまで読んでも「複数のタイプにまたがっている気がする」「セルフ診断では決めきれない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

更年期は個人差が大きく、同じ症状でも体質や背景によって最適な処方が変わります。当店では、症状の経過・体質・生活習慣を丁寧にうかがった上で、お一人おひとりに合った漢方薬をご提案しています。

  • LINEでの相談に対応
  • 粉薬・錠剤・煎じ薬から選べるプラン
  • 体調・季節に合わせて配合を調整
  • 継続的なフォローで体質改善をサポート

更年期は、漢方薬と生活習慣の見直しを組み合わせることで、少しずつ穏やかな毎日へと近づけていける時期です。更年期のつらさを少しでも楽にするお手伝いができればと思いますので、お気軽にLINEからご相談ください。

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